コンピューターゲームといえば、まだパックマンであった頃、ディズニー・アニメーターのフランク・トーマス氏とオリー・ジョンストン氏は、1981年に出版した自著『ディズニーアニメーション 生命を吹き込む 魔法 ― The Illusion of Life ―』において、アニメーションの基本原則7項目をまとめました。
その7つの基本原則は、現在では、全アニメーションの基本的概念として知られており、内容は以下の通りです。
- 押し潰しと伸縮
- 演出
- 予備動作
- 逐次描きと原画による設計
- あと追いの工夫
- 両端詰め
- 運動曲線
これら7つの原則を通じて、コンピューター・グラフィックス登場前の、純粋な手描き2Dアニメーションの基礎が作られました。この原則はその後、3Dアニメーションでもうまく転用されました。対話型メディアであるゲームにおいては、一部原則の関連は薄くなりますが、少し再解釈することでその普遍的な妥当性がはっきりとわかります。
アニメーションの基礎を理解する事はかなり重要なので、ここではビデオゲームのアニメーションという視点から一緒に詳しく見ていきましょう。
原則 1: 押し潰しと伸縮
これは人物やモノ(飛び跳ねるボール等)の一部を押し潰したり引き伸ばしたりすることで、一定の方向に向けて動きを誇張する技術です。
原則 2: 演出
直接的に演出が関係するのは、ゲームの中でも(プレーヤーがゲーム中に操作するのに対して)アニメーターがカメラやキャラクターを操作することで、映画のように場面が決まっている箇所のみです。
演出とは、どのような内容も全く間違えようが無いほどに、明確に示すという原則です。
原則 3: 予備動作
予備動作とは、たとえば、跳ねる前にしゃがむ動作、またはパンチする腕を後ろに引く動作等です。
自然界では、人が跳ぶにはまず、身体を地面から浮かせるのに十分なエネルギーを得るために膝を曲げてしゃがまなければなりません。
これはある意味、動作そのものだけでは見せる事ができない、動作中のエネルギーの流れを見せるのに使われています。
原則 4: 逐次描きと原画による設計
各フレームで、逐次的に(フレーム1から順を追って)作業することと、主要なポーズだけを先に描いて(ブロッキングと呼ばれる)素早く流れを生みだしてから調整していく、という二つの手法があります。ただし、それぞれの手法は明らかに異なっています。
原則 5: あと追いの工夫
「あと追いの工夫」の概念は、いかにキャラクター本体の一部が明らかに異なる速さで動いているか、です。
パンチ中の動きでは、頭と身体が先導し、曲がった腕が後ろから遅れて付随し、衝撃を与える打撃の少し前に前方へ鋭く飛びます。
原則 6: 両端詰め
両端詰めは、動く部位の加速と減速の視覚的効果を意味しています。
動作の始まりと終わりである動き出だしと動き終わりは遅く、これは一般的にその物体やキャラクターの身体の一部の重さに関係しています。
原則 7: 運動曲線
物体やキャラクターが動く時、歩いている時に腕や脚が振られた時などは、ほとんどの動きが自然に曲線を描きます。
身体が描く自然なカーブから外れた部位は、目に留まり不自然に見えてしまう事もあるため、運動曲線は完成度と動きの正確さを上げるのに役立つ手法です。運動曲線は真の芸術といえるでしょう。